教師なキミに生徒なあたし


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 とある日の昼休み。
 あたしはお弁当も食べず、悲鳴をあげるお腹をおさえて中庭にいた。
 目の前には、なかなか二枚目の男子学生。
「おっ、俺と付き合ってくれない?」
 お決まりの告白シーンというやつだ。
 あたしはこれでも、けっこうモテる。だから、時々こんな風に名前も知らない相手から告白されたりするんだけど、でも、あたしにはその気ゼロ。
「ごめんね。あたし、好きな人がいるの。しかも、ちゃんとその人と付き合ってるから」
 あたしの言葉を聞いた二枚目は、がっくりと肩を落とした。
 気持ちは嬉しいし、ありがたいとも思うけど、こういう時、あたしは相手に優しい言葉なんかかけたりしない。思わせぶりな態度をとって、後になってこじれても困るし、それに、その気もないのに優しくしたりするのは、かえって相手に対して失礼だと思うから。
 だから、あたしは素っ気ない態度をとったり、逆に冷たいと思えるほどの態度をとるようにしている。
「話はそれだけ? だったら、もうあたし教室に戻るね。おなかペコペコなのよ」
 それだけ言うと、あたしは相手の返事も聞かずに、その場を後にした。
 佐紀が言うには、さっきの二枚目、サッカー部のエースストライカーで女の子にも人気のあるヤツならしい。
 でも、そんなの関係ないもんね。だって、あたしは宮本先生が大好きなんだから。相手がどんなカッコいい男でも、女の子に人気があるヤツでも、そんなことは知ったこっちゃない。
 今のあたしには先生のハートをつかむことが、一番の最優先事項なんだから。
 他のことは、どうだっていいのよ。
 なんて思っていたんだけれど。
 なんとあの二枚目、思っていた以上の人気物だったみたい。あれよあれよと言う間に、あたしが彼を振ったという話は、その日の内に学校の隅々まで知れ渡ってしまった。
 そのおかげで、翌日からあたしは彼のファンらしい女の子たちから、すっごい目をしてにらまれたり、通りすがりに「いい気になってんじゃないわよ」みたいなことを言われたりするハメになってしまった。
 まあね、あたしはそんなの気にするタイプじゃないから、適当に無視していたんだけど。
 元々あまり女の子に好かれるタイプじゃないことはよく分かっているし、今さらそんなことくらい、どうってことないのだ。


 そんなことがあった週末の土曜日。
 あたしは朝早起きして、サンドウィッチをたくさん作った。
 天気は良好。先生の家の近くにある河原まで行って、ピクニック気分で一緒に楽しくお昼を食べようと思ったから。
 作ったサンドウィッチをバスケットに入れ、それを持ってあたしは家を出た。ここから先生の家まで、電車とバスを使って約一時間半。ウキウキしてるから、ちっとも退屈なんかじゃない。もうすぐ先生に会えると思うだけで、心はこれ以上になく踊ってしまう。
 恋って不思議。
 顔は美人で通ってるけど、特に女の子らしいってワケではないあたしが、こうやってお弁当なんか作ったりして、遠い先生の家まで通っている。しかも、嫌々やっているんじゃなくて、楽しくて楽しくてたまらないんだもん。
 ああ、本当に幸せ。
 ついでに、共稼ぎの両親に感謝。おかげで料理は得意だし。でも、もしあたしが料理得意じゃなくっても、四苦八苦しながらお弁当作ったりするんだろうなぁ。本当に、人を好きになるというのは、不思議なものだ。
 なんてことを考えながらニヤついているウチに、あっと言う間に先生の家についた。チャイムを鳴らし、出てきた先生にあたしは笑顔で言った。
「先生、河原に行こう!」
「えっ、あ、ちょっと、オイ!」
 慌てる先生の腕を強引に引っ張って、あたしは先生を河原に連れ出した。
「ホラ、お弁当作ってきちゃった!」
 河原の斜面に腰をおろし、あたしはバスケットのふたを開けた。
「うわー、本当だ。すごいなぁ。これ全部、自分で作ったのか?」
 驚いた先生の顔に、すっかり気分を良くしたあたしは大きくうなずいた。
「うん、先生と一緒に、この河原で食べようと思って」
 今は六月。梅雨入り宣言後の雨ばかり降る中、今日は珍しくカラッと晴れた。河原を吹き抜ける風は心地よく、隣には大好きな先生がいて、あたしが作ったサンドウィッチを美味しそうに食べてくれている。こんな幸せが他にある? もう、本当に最高の気分。
 景色と風を楽しみながら、あたしたちはしばらく無言でサンドウィッチを食べていた。会話なんかなくても、全然気まずくなんてならない。隣の先生を時々チラリと盗み見るだけで、もう充分に満ち足りた気持ちになれる。
「ねえ、先生?」
 しばらくして、あたしは先生に声をかけた。
「―――――ん?」
 穏やかな顔の先生が、あたしの方に振り向く。
「先生ってさ、あたしと付き合う前に彼女とかいなかったの?」
 そう、これはずっと気になっていたこと。だって、あたしはかなり強引な形で先生に交際を突きつけた。でも、考えてみれば、先生には彼女がいたのかもしれない。それが、あたしのせいで別れなきゃならなかったんだとしたら、それは、かなりの問題だ。
 うかがうようにしてあたしが見ると、先生はさらりと答えた。
「いたよ」
 ああ、やっっぱり?!
「中原と……」
「知佳!」
「………知佳と知り合う直前に別れたけど」
 そう言うと、先生は大きく息を吐いた。そして、前の彼女を思い出したのか、ちょっと落ち込んだ様子を見せる。
 でも、あたしはホッとした。あたしが原因で別れたんじゃなかったんだ。あー、良かった。
 しかし、となると、気になることがもう一つ。
「どうして別れちゃったの? 先生がフッたの?」
「まさか」
 先生は肩をすくめる。
「俺がフラれたんだよ」
「えー、ウソでしょう! どうして?!」
 信じられない。先生をフルなんて、そんなもったいないことするなんて。どこのバカだ、その女は!
 あたしが驚きのあまり叫び声をあげる隣で、先生が憮然とした顔をする。
「どうして、って………なんでも向こうが言うには、俺は優しすぎて頼りがいがないんだそうだ。ついでに優柔不断なところも、一緒にいるとイライラする、とまで言ってたな」
「………それって、先生の方から告白して付き合った彼女だったの?」
「違うよ、向こうから告白してきたんだ。その時は、俺の優しくて穏やかなところが好きだ、とか言っていたんだけどな」
 少し落ち込んだような顔で、先生は言った。
「だから、中原も……」
「知佳!」
「………知佳も、どこがよくて俺なんかを好きになったのか知らないけど、きっと最初のウチだけだと思うぞ。その内きっと、俺じゃ物足りなくなるんじゃないかな。だから、早く俺なんかのことは………」
「そんなことないよ!」
 あたしは怒ったように言った。
「そんなこと、絶対にない! だって、こんなに先生のことが好きなんだもん。嫌いになるなんて、考えられない! ひどいよ、先生。そんなこと言うなんて!」
「付き合い初めの頃は、誰だってそう思うものなんだよ。だけど、そういう気持ちはそう長続きするもんじゃない。だから、みんな別れちゃうんだ」
 苦笑しながら、まるで小さい子供を諭すような目で、先生があたしを見る。それにあたしは腹を立てた。
 確かにあたしは子供かもしれないけど、でも、人を好きになる気持ちは、大人のそれと変わらない。
「変に子供扱いしないで! あたしは本気で先生のことが好きなんだから! 先生のことが、好きで好きでたまらないの! ホントよ、ホントなんだから!」
「………知佳…」
 あんまり激しく怒ったから、ついでに大きい声まで出したものだから、気がつくと、あたしの目に涙が浮かんできてた。その涙を浮かべた目で、あたしは先生をにらみつける。
「冗談言っているわけでも、先生をからかって遊んでいるわけでもない。あたし、本当に先生のことが好きなの!」
 目にたまっていた涙が、ボロボロとこぼれ出す。
 嫌だ、カッコ悪い。女の涙を武器にするつもりなんてないのに。
 そう思っているのに、どうしても涙がとまらない。
 そんな風に、涙を流しながらあたしがにらんでいると、複雑な顔をしてあたしを見ていた先生が、そっと目を伏せた。
「ごめん」
 そして、ポケットから出したハンカチを、おずおずとあたしに差し出す。そして、怒っているあたしがそれを無視していると、不器用な手つきであたしの涙をふいてくれた。
「泣かせるつもりじゃなかったんだ。――――ただ、俺は慣れてないもんだから………こんな風に、かわいい女の子から好きだ好きだって言われることに、全く免疫がないもんだから、それでちょっと、いや、かなりとまどってるんだ。それに」
 困った顔を先生はした。
「知佳は生徒だろ? 俺はこんな性格だから、これまでごく普通に常識的に生きてきた。だから余計に……その、知佳の気持ちをちゃんと受け止めるかどうかってことを、考えてみるところにまでもなかなかいかないんだよ」
「……………」
「だって、やっぱり俺は教師だから。それに、もともと冒険は苦手だし、普通であることを最良として生きてきたタイプの人間だから。堅物とまではいかないけど、真面目なだけが取り得の、面白みのない人間なんだ、俺は」
 それまで黙って先生の話を聞いていたあたしは、大きく息を吸い込んだ。そして、それをゆっくりと吐き出す。
 真面目に話をしてくれた先生の言葉を聞いているウチに、あたしの怒りはすっかり落ち着いた。
 先生の言っていたこと、なんとなくだけど理解できる。あたしとは性格が違うから、完全に理解できたワケじゃないけど、でも、なんとなくは分かった。
 つまり、教師と生徒の壁は厚い、と、やっぱりこういうことだと思う。特に、先生のような真面目なタイプの人にとっては。
 でも、それなら大丈夫。長期戦は覚悟の上。それに、来年になれば、あたしは大学生になる。そうしたら、もう教師と生徒じゃなくなるんだもん。
 となると、今のあたしにできることは、それまでにゆっくりと、あたしという人間を先生に知ってもらうことだけ。それはもう、今までだって、ちゃんと分かっていた。
 あたし、初めて会って一目ぼれした時より、ずっと先生のこと好きになってる。好きな気持ちはどんどん大きくなってる。
 さっき、先生の本心を聞けて良かった。あれこそあたしが好きな先生だ。
 先生がもっと物事を適当に考える人で、生徒であるあたしとも簡単に付き合うような人だったら、きっと今頃、あたしは先生のことが好きじゃなくなってたと思う。
 なんでだろう。あたし、別に真面目な人が好きってワケじゃないのに。
 好きになった人が自分のタイプになるってよく聞くけど、あれって本当なんだなぁ。
「ねえ、先生? あたしのこと、嫌いじゃない?」
 そう聞くと、ちょっと考えてから先生が言った。
「………ああ、そうだな。嫌いじゃないな。最初は、ほら、いきなりキスされたり脅迫まがいのことされたりしたから、なんてとんでもないヤツなんだと思った。でも、知佳のことが少しずつ分かってきた今では、嫌いとは思わないよ。……その、特別な意味で好きってワケでもないけど」
 そう言って、先生が申し訳ないような顔をしたけど、あたしにはそれで充分だった。嫌われてないし、あたしという人間そのものを、少しずつでも先生が理解してくれてきているのなら、もう、それで充分だ。
「いいの、先生。あたし、嫌いじゃないって言われただけで、もうすっごく幸せ。ありがと、先生」
 あたしがにこっと笑うと、先生が微かに頬を染めた。
「ねえ、先生が分かってきたあたしって、どんなあたし?」
「ん? そうだなぁ」
 赤くなった顔を隠すように体を倒して、先生は草の上に寝転がった。そして、両腕を頭の後ろで組んで空を見上げる。
「まず、思ったより真面目なこと。苦手な数学、がんばってるもんな。それに、あれ以来、無理矢理キスしてこようとはしないし。実は俺、また襲われるんじゃないかと思って、内心ビクビクしてたんだ」
「そ、そんなー、変態じゃないんだから、襲ったりなんてしないよ!」
 あたしが慌ててそう言うと、はははと先生は笑った。
「それから……うん、知佳はいつでも明るく元気で前向きだよな。これは俺も見習いたいよ。それと、ああ、そうだ。これを忘れちゃいけない」
「なに?」
「ズバリ、男の趣味が悪い」
 からかうような口調の先生に、あたしは頬を膨らませてみせる。
「なによー、そんなことないわよ。先生は間違いなくいい男よ!」
「俺に言わせれば、それを断言してしまうところが、男の趣味が悪い、と、そう確信するところなんだけどな」
 相変わらず空を見ながら、楽しそうにそう言う先生。
 春物の薄いストライプ柄のシャツを着た先生は、学校で見るスーツ姿の時よりもさらに若く見える。そのシャツが、先生の呼吸に合わせて上下に揺れる。それを見ていると、なんだかあたしは、今すぐにでも先生に抱きつきたくなってしまう。
 抱きつかないまでも、先生に寄り添って、あたしも一緒に横になりたいなぁ、って思ってしまう。
 男の人の胸って不思議だ。女と違ってただ真っ平らなだけなのに、ひどく頼もしく見えるのはどうしてだろう? 見ているだけで、なんだかすごくドキドキする。
「ほ、他には? あたしのどんなところ知ってる?」
 そのドキドキを隠し、なんでもないフリしてあたしは先生を見つめた。
「他にか? うーん、あっ………いや、なんでもない」
 なにかを言いかけて、先生が口を閉じる。そんなことされると、気になってしょうがない。
「なに? なにを言いかけたの? 教えてよ、先生」
「いや、その、ホントになんでもないんだ」
「そんなこと言わずに、ねえ、教えてよ。教えてったら! もう、よーし」
 あたしはいきなり、先生の横腹や脇をくすぐり始めた。
「うわっ、あははっ。やめろっ、やめろって! あはははは」
 どうも先生はくすぐり攻撃に弱いらしい。あたしが調子に乗ってくすぐり続けると、体をよじって抵抗していた先生が、がばっと体を起こした。そして、あたしの両手首をつかむ。
「わ、分かったよ。言う、言うからっ、もうくすぐるのはカンベンしてくれっ」
「ほーらね、最初から素直に言っていればよかったのよ」
 ニヤニヤ笑いながらそう言うと、先生はあたしの手首を離し、ほーっと脱力したように息を吐いた。
「で、なんなの?」
 先生はチラリとあたしを見た。そして、なんだか複雑な顔をする。
「なに?」
「い、いや、そのぉ………」
 なんだか言いにくそう。もしかして、悪い面を言おうとしてるワケ?
「先生、悪い面でも気にしなくて言ってくれていいわよ」
「いや、そういうワケじゃないんだけど………その、知佳はモテるんだな」
 ボソリと言った先生の言葉に、あたしはキョトンと瞬きする。
「は?」
「だ、だから、知佳はモテるんだなぁって思って。その、噂とか色々聞いたし」
「噂?」
 しばらく考えて、あたしは「ああ!」と両手を合わせた。
 先生が言っている噂って、きっとあの二枚目とのことだ。サッカー部のエースなんとかいう、あの。
「先生もあの噂聞いたの? ははは、まったく、いやぁねぇ。あんなことが噂になるなんて、学校もホント、暇人ばっかりなんだから」
「相手の生徒、すごくかっこよくて人気のある子だそうじゃないか」
「そうらしいわね」
 そのせいで、あたしは少しだけ苦労させられている。あの二枚目を好きな女の子たちが、もううるさくてうるさくて。
 なんてことを思って肩をすくめたあたしは、先生がなんだか考え込んでいるのに気づいた。声をかけようと思ったのと同時に、先生があたしを見て言った。
「そんなにかっこいいヤツから告白されて、どうして知佳は断ったんだ? 俺なんかより、よっぽどそいつの方が………」
「やめてよ、先生」
 あたしは大きなため息をついた。
「何度も言ってるけど、あたしは先生が好きなの。だから、他の男から告白されたって、断るのは当たり前でしょう?」
「そ、それはそうなのかもしれないけど、でも………」
「でももへったくれもないわ! なによ、先生、やっぱりあたしの気持ちを信じてくれてないんじゃない! ひどいわ!」
 落ちついていた怒りが、またあたしの中で沸々と燃えたぎり始める。それに気づいたのか、先生が慌てたように手を振った。
「いやっ、そうじゃないんだ。そうじゃないんだけど……」
 そこまで言って、また考え込んでしまう先生を見て、あたしはイライラし始めた。
「そうじゃないんだけど、なにっ?!」
 先生がはぁ〜っと大きく息を吐いた。
「なんだか、俺、変なんだよなぁ」
「変って?!」
「知佳がそのかっこいい人気者の生徒から告白された噂を聞いてから、なんだか無性にイライラしたり、落ち込んだりするんだ。なんだろうな、これ。なあ、なんだと思う?」
 あたしの胸がドクンと鳴った。
 本当に困った顔をして、あたしを見つめる先生。
 そんな先生の顔を見ていて、あたしはボーッとその場に固まってしまった。
 だって、だって、先生が今言ったことって………。
 気がつくと、あたしは先生に抱きついてた。
「先生っ!!」
「うわぁっ」
 抱きついた勢いで、座っていた先生の上半身が倒れる。その上に、あたしの体が覆いかぶさるような形になった。
「こ、こらっ、知佳、早く降りろ!」
 先生の顔は、もう考えられないくらいに真っ赤になってる。あたしはもうガマンができず、至近距離から先生の顔を見下ろしながら笑顔で言った。
「なんだろうなぁ、って、そんなの決まってるじゃない!」
「はぁ?」
「先生はヤキモチ焼いてるのよ!」
「ヤキモチ?!」
 先生の目が大きく見開いた。
「そ、それはないだろう?!」
「どうしてよぉ!」
 否定した先生の言葉に、あたしはムッとする。
「だって、ヤキモチとなると、俺は知佳のことが好きだってことになるんだぞ? それはありえないだろう!」
「だから、どうしてありえないのよぉ?!」
「だって、俺は教師だぞ!! っていうか、そんなことよりも、早く上から降りてくれ!」
 先生は慌てふためいているけれど、あたしは降りてなんかやらない。
「ねえ、認めなさいよ。先生は絶対にあたしのことが好きなんだって。じゃないと、ヤキモチなんて焼くワケないじゃないの」
「だから、ヤキモチなんて焼いてないって!」
 まったく、往生際が悪いというか、なんと言うか。
 ちょっと悩んだけど、あたしは行動に出ることにした。そう、つまり、早く降りろと騒ぎ立てる先生の唇を、自分の唇でふさいだのだ。
 う、と先生が目を見張る。
 二度目のキス。あたしは静かに目を閉じた。
 幸せが口から流れてくる。でも、先生の方からしてくれるまで、ずっとガマンするつもりだったのに………。
 あたしはそっと唇を離すと、先生の目をのぞきこんだ。
「どんな気分?」
「あのっ………えっと………」
「ん?」
「…………その………………すごく…よかった」
 そう言うと、先生はしょぼくれた顔をした。あたしはニンマリ笑う。
「ほらね、やっぱり先生はあたしが好きなのよ。これで分かったでしょう?」
 しばらく泣きそうな顔であたしを見ていた先生は、あたしの体をはねのけてガバッと体を起こした。
「違うっ、やっぱり違うっ! そんなはずないっ!」
 ブンブンと首を振りながら、まるでこの世の終わりかのような悲壮な顔をする。かと思うと、うわーっとか叫びながら、どっかに走って行ってしまった。
「……………。」
 目を点にして、あたしはそんな先生の後ろ姿を見つめた。


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(中途半端なところで終わってすみません。本当にすみませんっ!)




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