ずっとあなただけを・・・


     (3)


 水樹は優等生である。
 これまでに、理由もなく学校を遅刻したことなど一度もないし、ましてや授業をサボるなんて、考えてみたこともない。
 空を見上げると、秋晴れの爽やかなお天気である。
 そんな気持ちのよい空模様とは対照的な百合子の蒼白な顔を前に、水樹は生まれて初めての授業サボりを、ただ今経験真っ最中だった。
 午後の授業開始のチャイムは、つい先ほど鳴ったばかりである。
「妊娠って、それ本当なの?!」
 話の内容が内容なだけに、亨には教室に戻ってもらった。昼休み中にはちらほら見かけていた他の生徒たちも、みな屋上から姿を消している。
 水樹からの問いを受けた百合子は、少し体を震わせた。
「はっきりとそうだって決まったワケじゃないけど、で、でも、もう二週間近くもアレが遅れてるの」
「いつもはどうなの? 決まった周期できちんと来るほう? それとも不順?」
「どちらかと言えば、いつも遅れるほう。でも、こんなに遅れたことって今までないし………」
 首をうなだれる百合子に、水樹は渋顔で言った。
「検査はしたの?」
 驚いたように百合子が目を見開く。
「検査って………産婦人科?! そんなとこ、まだ行ってないに決まってるでしょう?!」
「そうじゃなくって、検査薬使っての尿検査。わたしも詳しくは知らないんだけど、そういうのがあるんでしょう?」
 決まり悪そうに、百合子は首を振った。
「まだやってない。だって、なんだか恐くって。もし、それで陽性反応が出たらと思うと………」
 ガタガタ震える百合子を見て、水樹は大きな溜息をついた。
 実際、見た目には冷静であったものの、水樹もかなりパニクっていたのだ。
 妊娠? 百合子が? まだ高校三年生なのに?!
 チラリと百合子の腹部を見た後、すぐに水樹は目を反らした。あそこに、百合子以外の別の命が宿っているかもしれないと思うと、なんだかそこに目を向けてはいけないような、そんな気になってしまう。
「だいたい、どうして今の今まで、アレの遅れをおかしいとは思わなかったのよ。もっと早く気付いていても、よかったんじゃないの?」
「宗くんの浮気現場を見たのが、ちょうどその開始日だったの。あの後、あたしも悩んだり怒ったりが忙しくて、すっかり忘れてたの。それが、ついさっき、ふと思い出して」
 目を潤ませながら、百合子は水樹にしがみついた。
「もし本当に妊娠していたら、どうしよう?! ねえ、どうすればいいと思う?!」
 そんなこと、水樹に訊かれても分かるワケがない。
「取りあえず、早く検査することね。本当に妊娠しているかどうかを確かめないと」
「嫌よ! だって、恐いんだもん!!」
「そんなこと言っている場合じゃないでしょう?!」
「だって、イヤなものはイヤなんだもん!」
 駄々っ子のような百合子の言動に腹を立て、怒鳴るために大きく吸い込んだ息を、気を取り直して水樹はゆっくりと吐き出した。今、百合子は冷静ではない。ここで自分がキレてどうする。
 気持ちを落ちつけると、根気強く水樹は言った。
「妊娠してなかったら、こんなに悩む必要もないでしょう? ハッキリさせた方がいいと思う。それから、すぐにでも宗太郎と話し合った方がいいんじゃない?」
「ええー、宗くんと? それって仲直りしろってこと?」
「意地張ってる場合じゃないでしょう」
 百合子は顔をしかめた。
「でもなぁ、あと何日間は無視してやるつもりだったんだけど。簡単に許しちゃうと、すぐにまた浮気するかもしれないし」
 こめかみをピクピクさせながら、それでも水樹はガマンして言った。
「でもね、妊娠していた時のことを考えると、宗太郎とはすぐにでも仲直りしておいた方がいいと思うわよ」
「だったら水樹、あんたが話し合いの場のセッティングしてよ。直接あたしから宗くんに声かけるなんて、なんだかカッコ悪いしさー」
 冷静に、冷静に、と水樹は心の中で唱え続ける。
「そうだ。場所もあんたの家がいいわ。妊娠がどうの、なんて話を自分の家でしたくないもの。誰に聞かれるか分からないし。それは宗くんだって同じでしょう? だから、あんたの部屋を使わせて」
 冷静に、冷静に、と、右手を強く握りしめながら水樹は唱え続ける。
「どうせ、あんたんちって、昼間は誰もいないんでしょう? ちょうどいいじゃない。ねっ、よろしく頼んだわよ」
 これ以上、ガマンしなければならない義理がどこにある?!
 さすがの水樹も、ついにキレた。
 かなり本気でキレたので、怒鳴るなんてことはしない。冷たく感情のない目で、静かに百合子をにらむ。
 と、そこで初めて百合子も水樹の異変に気付いた。
「――――あら、水樹ったら、どうしたの? そんな恐い顔して」
 キョトンとする百合子に、水樹は言った。
「わたし、あなたのことなんて、もう知らない」
「え――――?」
 百合子の目が点になる。
「あの、それってどういう………」
「さよなら。もう話しかけてこないで」
「あ、ちょっと水樹!」
 なにか言いかけた百合子に背を向けると、水樹はスタスタとその場を立ち去った。
 人がちょっと優しくしたら、すぐ調子に乗って付け上がる。まったく、思いあがりもはなはだしい。
 その後、教室に戻った水樹は、授業に遅れたことを教師に謝罪して席に着いた。これもすべて百合子と宗太郎のせいだと思うと、ますます怒りが大きく膨れた。
 そんな水樹のぴりぴりした感情は教室中に伝えられ、なんだかその授業は、なんとも言えぬ緊張感と殺気立った空気の中で行われたのである。
 余計な私語をする者なんて、誰もいない。教師でさえも、伺うような目で水樹をチラチラ見ていたほどだった。


 放課後、水樹と亨は学校の図書室にいた。
 平日の放課後、二人はほぼ毎日のように一緒に勉強しているが、その場所はたいていが図書室である。
 室内にある席に向かい合わせて座りながら、昼休み後、百合子との間でどんなことがあったのかを、頭から湯気を出しながら水樹は亨に話していた。
「本当に、もう、百合子ったら、何様のつもりかしら! 金輪際、二度と百合子とは口をきかないどころか、目も合わせないことにするわ!」
「はは、でも、横山さんらしいな」
 水樹の話を聞いて、亨は愉快そうに笑った。そんな亨を見て、また水樹が眉をつりあげる。
「笑いごとじゃないのよ、本当に頭にきたんだから。でも、まあ、ちょうどよかったのかもしれない」
「なにが?」
「これでもう、百合子の相談事とやらに時間を取られずにすむもの。さあ、勉強しましょう。受験まで、あといくらもないんだから」
 さっぱりした顔でそう言うと、心機一転、水樹は参考書やノートを広げ始めた。そんな水樹を見て、亨は心の中で溜息をつく。
 水樹には友達と呼べる相手がいない。
 そりゃ、とりまき連中や憧れの目を向ける人間は山のようにいるが、でも、それは友達ではない。彼らと水樹の間には、お互いが引いたどうしても破れない一線がある。
 そんな水樹が最近、百合子と仲良くしているという。その噂を聞いた時、亨は自分の耳を疑ったものである。
「なあ、亨、おまえ知ってるか?!」
「なにを?」
 その噂を亨に耳に入れたのは、かつて生徒会で敏腕コンビとうたわれた亨の相棒こと親友、元副会長の中村一樹である。
「あの水樹さんが、横山百合子と仲良くしてるってことだよ!」
 中等部の頃からの水樹崇拝者、ちなみにファンクラブにまで入っている熱狂的ファンの一樹が、信じられないといった顔で亨につめよってきた。
「おまえ、知ってたのか?!」
「い、いや、俺も初めて聞いた。それ、本当のことなのか?」
「俺も詳しくは知らないんだけどさぁ、聞いた話では挨拶し合ったり、時々話しをしたりとかしてるらしんだ。ああ、俺はショックだよ! だって横山百合子って言えば、悩殺ボディを鼻にかけて、男をタラシこんでは大喜びするような、そんな女だぞ?! おまけに成績だって、いつも学年でワーストテンに入ってるって聞くし。もう、最低じゃないか! そんな女と水樹さんが仲良くしてるなんて!」
 わめきたてる一樹を前に、亨は渋い顔して口をへの字に曲げる。
「なにも、そこまで言うことはないだろう? 成績のことはともかく、最近は彼女、山崎と仲良くやってるから他の男には手を出してないって聞くし」
 そんなフォローを入れてみたものの、内心は亨だって心底ビックリしていたのだ。百合子と言えば水樹の天敵。この青桐学園中、水樹が最も嫌っていた女子生徒が百合子だったはずだ。
 それが、仲良くしている、だとぉ?!
 そんな話、これまで水樹から聞いたこともない。
「やめさせろ! 絶対にやめさせるんだ! おまえ、水樹さんの彼氏だろ?! 水樹さんがあの女に汚されるのを、黙って見ていていいのかよ?! 俺はイヤだ―――っ! うわーん、水樹さぁーん!」
 隣でギャーギャー言っている一樹は取りあえず無視し、しばらく考えた亨は、ヨシッ、と大きくうなずいた。
 その噂が本当かどうか、ちょっと調べてみようと思ったのだ。
 もちろん、水樹に直接訊いてもいいのだが、それでもし噂がウソだった場合、きっと水樹は猛烈に怒り、不機嫌になるに違いない。それも面倒臭いので、コッソリ調べることにした。
 一樹からこの話を聞いたのが、夏休み明けて一週間くらいの時だろうか。それから約一ヶ月ほど、亨は水樹の行動を注意深く観察してみた。そして、その噂が真実であることを突き止めたのである。
 ま、そうは言っても、亨が見るところ、水樹は嫌々ながらに百合子の相手をしてやっているようではあったが。
 二人に関する噂がそこそこ本当であったことを知った時、実は亨は喜んだのだ。もしかすると、百合子は水樹にできた初めての友達かもしれない。きっと、百合子くらいだったのだろう。近寄りがたい雰囲気を持った水樹に、なんのためらいもなく無神経に踏み込んでこれたのは。
 そして気がつけば、二人の仲は恋愛相談をし合うような物にまで発展していたらしい。
 友達は大切なものだ、と亨は思っている。確かに面倒を持ち込まれることもある。でも、それを解決して友達に感謝されるのも一つのいい経験になるし、自分だって助けてもらうこともある。
 亨にしても、この性に合わない金持ち学校でそれなりに楽しくやってこれたのは、一樹や他の生徒会の仲間たち、それに気の合うクラスメートのお陰だと思っている。
 だから、たとえ相手が百合子であっても、水樹に友達と呼べる存在ができたことを、亨はとても嬉しく思っていたのだ。
 二人のことを、温かく見守っていたのである。
 それなのに。
 どうやらもう、あっと言う間に二人の関係は終わりを迎えることになったらしい。
 これをこのまま放っておいていいのか。
 少し考えてから、すでに黙々と勉強を始めている水樹に、何気なく亨は言った。
「どうして水樹は医者になろうと思ったんだ?」
 参考書から目を離し、手にしたペンシルの動きをとめると、水樹は亨を見て首をかしげた。
「どうしてそんなこと訊くの?」
「そりゃ気になるさ。なんか理由があるんだろ? よかったら教えてくれよ」
 なにか嫌なことを思い出すように、水樹はほんの少しだけ顔をしかめた。亨はまだ、水樹の姉の典子がどうして死んだのかを、水樹に話してもらったことはない。
 亨が見守る中、小さく息を吐いてから水樹は答えた。
「ありきたりだけど、病気や怪我をした人を助けたいの。病気や怪我で死んでしまう人を、少しでも減らす助けがしたいの。それだけよ」
「ふうーん、そっか」
「なによ、それがどうかしたの?」
 探るような表情の水樹に、亨はちょっと真面目な顔をして言った。
「それってさ、困っている人を助けたいということだよな? だとすると、どうなんだろう。病気や怪我をした人を助けるのと、心が傷ついた人を助けるのと、それは水樹にとって別物なのか?」
「………なにが言いたいの?」
 少しキツイ目で水樹が亨をにらんだ。それを気にもとめずに亨は言う。
「つまりさ、俺が言いたいのはこういうこと。横山さんの態度の悪さは置いといて、でも彼女は本当に困ってるんだろ? だったらさ、力になってあげるべきなんじゃないのか? だって、水樹は将来医者になるんだろ? 医者っていうのはさ、体の具合だけを心配していれば、それでいいのか? 患者のメンタル面についても、気にかけるべきなんじゃないのか? 水樹はそう思わない?」
 眉間に眉を微かに寄せ、機嫌の悪い声を水樹が出す。
「それは、確かにそう思うわよ。でも、それと今回のこととは話は別だわ!」
「いや、違わないね」
 亨が珍しく厳しい口調をする。
「それができない人間は医者になるべきじゃない。なったところで、患者になる人間がかわいそうなだけだ」
「……………」  そして、亨はにっこり笑った。
「俺はそう思うけどなー」
 水樹は黙って亨をにらんでいる。
 さて、水樹がどうでてくるか、と思いながら、亨は笑顔のままで水樹の視線を受け止めた。
 しばらくすると、水樹が言った。
「その手には乗らないわよ」
 余裕の笑顔を浮かべて腕を組み、目を細めて水樹は亨を見た。
「うまいこと言って、わたしに百合子を助けさせようとしてるんでしょう? 冗談じゃないわ。どうしてあたしがそんな面倒なことを? あなた、一体なにを考えてるの?」
「別にー。俺はただ、医者になろうとする人間の心構えについて話してただけだけど?」
「よく言うわ。嫌よ、絶対にお断り。今後いっさい、あの二人にはかかわり合いにならないって決めたの」
「でもなぁ、本当にそんなのでいいのかなぁ? 困っている人を簡単に見捨てるような人間に、医者が務まるのか?」
「簡単に、って、わたしだってかなりガマンしたのよ! それなのに、百合子のあの高飛車な態度………。嫌よ、なんと言われても絶対に嫌っ!」
 水樹はツンとそっぽを向く。
 そんな水樹をしばらく見ていた亨は、やがて言った。
「そっか。そんなに嫌なら仕方ないな。ま、いっか。ほっとけば」
 そして、カバンから参考書を出し、ペンケースからペンシルを出すとにっこり笑った。
「さ、勉強しようぜ! 確かに俺たちには、他人のゴタゴタに首を突っ込んでる暇なんてないもんな」
 やけにアッサリ引き下がった亨を、水樹はいぶかしるように見た。
「いいの、ほっといて?」
「いいんじゃねーの? 確かに考えてみれば、横山さんが妊娠しようがしまいが、水樹にはなんの関係もないことだしな」
 水樹の方を見もせずに亨は言う。
「自業自得だ、ほっとけばいいよ。そりゃ、もし本当に妊娠してたら、それは大変なことになるだろうけど、でも、いいさ、ほっとけば。水樹には関係ないことなんだから。そうだろ、水樹?」
「そ、そーよ。その通りだわ」
「だったら、もういいじゃないか。やめよう、この会話。ほら、水樹も勉強して!」
「え、ええ」
 亨の、そのあまりの変わり身の早さに、水樹はどうも納得できない顔をする。しかし、別に亨が機嫌をそこねているような素振りもなければ、そのような表情もしていない。
 フゥと小さく息を吐くと、水樹も勉強し始めた。
「……………。」
「……………。」
「……………。」
「……………。」
 しばらく、無言で静かな勉強時間が続く。
 しかし、どうも水樹の気持ちはスッキリしない。あの、勉強に打ち込む頭の片隅で、亨がなにを考えているのかが気になってしまう。
「……………。」
「………ねえ、亨、さっきのことだけど」
「さっきのことって?」
「………いえ、やっぱりなんでもない」
 なんだかイライラする気持ちを抑えて、水樹は勉強に集中しようとした。
「……………。」
「……………。」
「……………。」
「……………。」
 でも、やっぱりイライラが頭の中から消えてくれない。ふと亨を見ると、いたって普通に勉強に打ち込んでいる。
「……………。」
「……………。」
 水樹はまた、亨を見た。その視線に気付いた亨が、にっこりと笑う。
 この、笑顔の裏にある亨の気持ちはなんだろう。それを考えると、もう勉強なんてやってられるワケがない。
「もうっ! 分かったわよ!」
 水樹は苛立たしげに、持っていたペンシルをバンと机の上に置いた。
「百合子の相談に乗ってやればいいんでしょう?!」
 その声を聞いて、亨は顔を上げる。
「え、水樹、相談に乗ってやるのか? うわー、優しいなぁ。でも、無理にやることはないんだぜ?」
「よく言うわ。無言の圧力かけてきたくせに!」
 亨は大げさに驚いた顔をした。
「圧力? 俺が? まさか! 俺、そんなことしてないぜ?! でも、さすがは水樹、本当に優しいなぁ。医者になろうってだけのことはある。俺、尊敬するよ!」
「ったく、わざとらしいんだから。もう、いいわよ」
 ニヤニヤする亨を、奥歯を噛みしめながら水樹はにらんだ。
「今日はもう無理だから、明日、百合子と話すわ。それでいいんでしょう?!」
「俺はなにも言ってないぜ? 水樹が自発的にやるんだろ? えらいよなー、水樹は」
「もう、いいってば! そんな風に言われると、余計に腹が立つわ!」
 頬杖をつき、怒っている水樹を笑顔で見ながら、やったね、と亨は心の中で喜びの声をあげた。水樹は賢い。ちゃんと相手の心の裏側まで考えることができる。頭のいい恋人を持つと、こういう時やりやすくて助かる、、なんてことを考えてニヤける。
 そして、水樹はというと、顔は怒って見せながらも内心は、ちょっぴり情けない気持ちになっていたのだ。
 自分はこんな性格ではなかったはずだ。
 嫌なものは嫌、したくないことはしたくない。他人の言いなりになんか、絶対にならない性格だったはずだ。
 それなのに、今の自分はどうだろう。なんだか、もう、うまい具合に亨からいいように操られ、言いなりになってしまっている。しかも、それがそんなに嫌なことじゃないのだ。
 怒った顔のままチラリと向こうを見ると、それに気付いた亨が、にっこり嬉しそうに笑ってくれた。思わず頬が赤くなる。
 そして、幸せだなぁと思ってしまうのだ。
 そんなことを思っていることを亨に知られるのが悔しいから、顔は怒ったままにしておく。そっぽを向いて、機嫌の悪いフリをする。
 きっと亨には、そんな水樹のお粗末な演技も見破られているに違いない。
「俺、水樹のこと大好きだぜ!」
 にこにこ顔でいきなりそんなことを言うのも、すべてお見通しだからに違いない。
 そして水樹は、そんな亨の言葉を聞いて、幸せだなぁと、やっぱり思ってしまうのだ。
 絶対に亨と同じ大学に行く。
 そのためにも、さっさと百合子の問題を片付けて、受験勉強に専念しなければならない。
 頭の中で明日の段取りをテキバキと考えながら、亨に気付かれないように水樹はこっそり溜息をついた。






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