「今年のジュリエットは。絶対に水樹さんよね!」
「そうよ、他にありえないわ」
「だって、三年生で一番、ううん、学園で一番美しいんですもの」
自分の周りで、目をキラキラさせながらおしゃべりに花を咲かせている級友たちの言葉を、特に興味がないといった風に田所水樹は聞き流していた。
実際に興味がない。
こんなことに夢中になって、みんなバカばかりだ、と水樹は心の中でつぶやいた。
毎年四月になると、この私立青桐学園ではある話題で持ちきりになる。
それは、今年のロミオとジュリエットには誰が選ばれるか、ということである。
ロミオとジュリエットとは、もちろんシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」のことであるが、それに選ばれるとはどういうことなのか。
創立三十周年を今年迎える青桐学園の高等部には、変わった、というか、くだらない伝統がいくつかある。
その中の一つに、六月の文化祭での演劇というのがあるのだ。上演されるのは毎年「ロミオをジュリエット」で、出演者はすべて三年生である。
ただこれだけのことなら、なんてことない。生徒たちにしても
「また今年もあれを観るのか」
とウンザリする程度のことで、特別に興味をかきたてられることはなかっただろう。しかし、実際はそうではない。この時期、男子生徒も女子生徒も決まってこの話題に夢中になる。
それはなぜか。もちろん理由がある。
なぜならこの劇、主役およびその他のキャストすべて、生徒たちによる投票で決まるからなのである。
つまり、人気投票の結果でキャスティングが行われるという訳だ。
四月末日になると、生徒会から全学年の各クラス全生徒に投票用紙が配られる。記入できるのは男女各一名の名前のみ。その集計を徹夜で行い、五月一日に生徒会室前に張り出すのが、その年の生徒会役員の初大仕事となるのだ。
当然、主役の二人は学年で最も人気のある男女それぞれ一名が選ばれることになる。
誰もがみんな主役になりたいと憧れるし、誰もがみんな主役になった二人に恋焦がれるのだ。
それにこの人気投票、他校の生徒からの注目度も高い。
青桐学園の生徒には金持ちの坊ちゃん譲ちゃんが多く、成績のレベルも低くない。また生徒に美男美女が多いということは有名なことであるからして、学園そのものが他校生の憧れになっている。
そんな青桐学園での人気投票である。
今年は誰が選ばれるのか?
当然、文化祭には、周辺のあらゆる学校の生徒たちが、期待に胸を膨らませて押し寄せることになる。
そして今年、その主役の内の一人、ジュリエットに選ばれるだろうと誰もが予想して疑わないのが、三年一組の田所水樹、その人であった。
当然、ものすごーく美人である。
「いいなぁ、水樹さん。羨ましいわ」
「ジュリエットに選ばれるなんて、どんな気分?」
「まだ、選ばれたわけじゃないわ。もしかしたら他の人が選ばれるかもしれないじゃないの」
素っ気なく答える水樹の言葉に、取り巻きの少女たちは声をそろえて抗議した。
「そんなこと、ありえないわ」
「水樹さんが選ばれるに決まっているわよ」
「そりゃ、他にも人気のある人はいるけど。三組の横山百合子さんとか」
「あの人は女子からの評判が最悪じゃない」
「それだったら、五組の須田さんなんかも、かわいくて人気があるわ」
「えー? でも、あの人は…」
いつまでたっても、くだらない会話は終わりそうにない。話を聞いているだけでムカムカしてくる。
水樹はカバンを持って立ち上がった。
「わたし、あまり興味がないの。帰るわ」
「え? あ、待ってよ、水樹さん」
「わたしたちも帰るわ。待って、水樹さん。あーん」
慌てて自分の後を追いかけようとする友人たちを無視して、水樹は足早に教室を出た。
ったく、バカバカしい。付き合っていられない。
田所水樹はお嬢様である。
家は三代前から地元に根付く大病院で、父親はそこの院長をしている。裕福な家庭の子息息女が多い青桐学園においても、指折りのお金持といえるだろう。
中学部から青桐に入学した水樹は、そのことだけでも周囲の注目を集める存在だった。
が、水樹が有名人である一番の理由は。
「クレオパトラか楊貴妃か」
「わが学園に天使が舞い降りた」
そう、その美貌にあった。
東洋人とは思えないほどの白い肌に、知的に光る切れ長の瞳に長いまつ毛。鼻筋はスッと通っていて唇は濃い桜色である。腰まである長い髪は柔らかく艶があり、染めてもいないのに薄茶色に光っている。
中学部の入学式当日、高等部や大学部からの見学者が後を絶たなかったぐらいだったから、それはかなりのものだろう。
そして、そんな野次馬たちを相手に、にこにこ笑って手を振る、といったことは決してしないのが水樹だった。
教室の周りに群がる見学者たちを、まるで誰もいないかのように無視しまくった。
そうはいっても、社交性がゼロなわけでもないので、話しかけられれば必要最低限の返事はする。あまり笑わず、どちらかというと、怒っているのかな、と思わせる表情をいつも顔に浮かべていた。
その、ちょっと近寄りがたい雰囲気がまた、水樹の人気を高める一つの要因になったりするもんだから、不思議なものである。
そして、中学一年の頃から際立って美しかった少女は、年を重ねるごとにさらに美しくなり、高校三年生の今、絶世の美女に成長していたのである。
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。
道を歩けばみんなが振り返る。今までに受けた告白は数知れず。芸能プロダクションからのスカウトされたことがあるとの噂もある。
本人は知らないが、ファンクラブもあるし親衛隊もいる。水樹がそういった類のものを嫌うから、内緒にしてあるのだが。
さらに。
「頭もいいんだよね、水樹さんは」
いつも学年でトップクラスである。
ここまでくると、ちょっとできすぎ、といった気もしないではないが、そんな水樹の、本人は認めないが唯一欠点といえるのが、その性格である。
とにかくキツい。
冷淡で皮肉屋で意地悪の合理主義者、これが水樹である。
これだけだったら、水樹の周りに集まる人間なんていやしない。しかし、頭の良い水樹は、何か問題が起きた時などテキパキとリーダーシップを取り、実に合理的に物事を解決してしまう。
怒らせると怖い。でも、すごく頼りになる。それに、なんと言ってもあの美貌である。
だから水樹の周りには、恐れおののきながらも彼女を尊敬し、崇拝する人々で溢れていた。
しかし、中には水樹のことを嫌うグループも、もちろんある。
「お高くとまっちゃって、なによ」
でも、水樹はそんなものは気にしないのである。
言いたいヤツには言わせておけばいいのだ。
気にする必要なんかなにもない。
だって水樹は、自他共に認めるこの学園の女王様なのだから。
水樹に対立するグループがイヤミのつもりでつけた「氷の女王」というあだ名は、いつの間にか誰もが知っている水樹の代名詞になっている。
「女王、っていうのがいいわね。あたしにピッタリじゃない」
本人も気にいっているらしい。
とびっきりキレイで頭が良く、ちょっぴり怖くて近寄りがたい。
それが田所水樹さまさまである。
そんな水樹の機嫌が最近悪い。基本的にいつもなんかしらの理由で機嫌が良くない水樹ではあるが、近頃、それが特に悪い。
それは「ジュリエット」のせいだった。
「客寄せパンダじゃあるまいし、なんでわたしがジュリエットなんかやらなきゃならないのよ」
その形の良い眉を微かに吊り上げ、水樹は心の中で悪態をついていた。
投票前ではあるが、水樹は自分がジュリエットに選ばれると思っている。というか、分かっている。当然だ。自分を差置いて、誰が人気投票で一位になれるというのか。
しかし水樹は、ジュリエットをやりたくないのだった。
理由は簡単。
バカらしいから。アホらしいから。やりたくないから。イヤだから。
大体、高校三年生といえば受験生である。それなのに、こんなことのために時間を割くなんて、信じられない。
青桐高等部の生徒たちは、そのまま青桐大学部へ行くものが多い。大学部もレベルは高く、それなりの歴史と格式を持っているので、エスカレーター式で簡単に入れるのなら、入るにこしたことはない、というのが大半の生徒の考えなのだ。特に女子は、毎年その八割が青桐大学部に進んでいる。
であるからして、受験生とはいっても青桐の生徒たち、他の学校の受験生に比べてかなりノンビリムードを漂わせているのだ。
そうでなくちゃ、この時期に劇の稽古なんてできるはずがない。
でも、水樹は違った。
他の大学に行くつもりなのだ。
成績にはそれなりの自信があるが、勉強なんて、やってやりすぎるということはない。余裕をもって受験に望み、失敗して浪人生になるなんて水樹のプライドが許さない。
だから、勉強しなければならないのだ。
それなのに、四月になってからというもの、誰も彼もが投票のことで頭をいっぱいにしている。誰も彼もが水樹にジュリエットの話題を持ちかける。
もう、ウンザリだ。
そんなわけで、水樹はここ最近ずっと機嫌が悪いままだった。
機嫌の悪い水樹が教室を立ち去った後、置いてけぼりにされた取り巻きの少女たちは、お互いに目を見合わせて肩をすくめた。
「まったく、水樹さんてば、つれないんだから」
「クールって言うか、大人って言うか」
「ちょっと冷たいなって、思う時もあるけど」
「でも、そこがまたいいのよねー」
うんうん、と少女たちはうなずく。
「なんといっても美人だもの」
「キレイよねぇ。肌なんて真っ白だし、背は高くてスラッとしてて、まるでモデルみたい」
「そんじょそこらのモデルより、水樹さんの方がよっぽどキレイよ」
「あのサラサラの長い髪、うらやましいわ」
「由香ちゃんは水樹さんと幼馴染なんでしょ? やっぱり小さい頃からかわいかったの?」
由香と呼ばれた、背が低く目の大きな少女は、思い出すように言った。
「水樹ちゃんは、やっぱり小さい時から水樹ちゃんだった。キレイでかわいくて、他の子とはちょっと違う雰囲気を持ってたよ」
やっぱりねー、とみんなうなずく。
「選ばれた人間って、いるのよね」
「少しとっつきにくいところもあるけど、でも、水樹さんの側にいられるだけで幸せ」
「わたしもー」
すでに宝塚のノリである。
「とにかく、絶対にジュリエットはわたしたちの水樹さんよ」
五月の投票結果が楽しみね、と少女たちは微笑みあった。
「水樹」
自分に熱いまなざしを向ける男子生徒たちの視線を物ともせず、下駄箱へと急いでいた水樹は、後ろから誰かに声をかけられたのに気づいた。が、それを無視して歩き続けた。
「ちょっと、呼んでるんでしょ!」
キーッと怒った声が後ろから響く。
相手が誰だか、もちろん分かっている。だから呼ばれたのを無視したのだ。
ウンザリした様子をあからさまにして、水樹は振り返った。
「何かご用かしら?」
そこには三組の横山百合子が立っていた。
「用があるから呼んでいるんじゃないの」
「じゃあ、早くしてくれないかしら。わたし忙しいの」
さらりとそう言う水樹に、百合子は片方の眉を吊り上げた。あんたなんかと話している暇はないのよ、と声には出していないまでも、あきらかにそういう水樹の視線に、百合子は真っ向から対抗する。
水樹と百合子とは、青桐学園の中学部からの仲である。
仲といっても、決して良いわけではない。なにかと張り合ってくる百合子を、いつも水樹が無視している、といった関係をずっと続けている。
ふん、と百合子は鼻をならした。
「わたしも本当はあなたなんかとは話したくないんだけど」
「だったら話さなければいいじゃない。それじゃ失礼。急ぐから」
そう言って立ち去ろうとする水樹の肩を、百合子はあわてて捕まえた。
「ち、ちょっと待ちなさいよ」
自分の肩にかけられた百合子の手を、ピシャンと水樹は振り払った。そしてそのままスタスタと歩き続ける。
しかし、百合子も意地で水樹を追いかけた。
「水樹、あんたの態度って失礼すぎるわよ」
「それは悪かったわね」
「悪いなんて思ってないくせに。この性格ブス」
「あなたにだけは言われたくないわね」
もちろん歩きながらの会話である。なんとか水樹の横に並ぼうと必死で歩く百合子の方を、まったく相手にするつもりもなく水樹は歩き続ける。
「ちょっと止まりなさいよ」
「そうする理由がわたしにはない」
そして下駄箱に着き、やっと足を止めた水樹の横に追いついた百合子は、ゼーハー言いながら水樹の腕をつかんだ。
「つ、捕まえた」
「……なんなのよ、いったい」
水樹はさげすむような目で百合子を見た。そしてまた、百合子の手を振り払う。
「言いたいことがあるなら早く言ってくれない?」
「いいこと教えてあげようと思ったのよ」
「いいこと?」
「そう、とってもいいこと」
やっと息の落ち着いた百合子は、ニヤリと意味深に笑った。
「今年のジュリエット、あんた自分が選ばれると思ってるでしょ?」
「だとしたらどうなのよ?」
「残念だけど、今年のジュリエットの座はあたしがいただくわ」
胸を張った百合子が自信満々にそう言う。
そんな百合子の態度により、会話の内容に水樹は腹を立てた。
また「ジュリエット」である。
いい加減、この話にはウンザリしているのだ。
時間の無駄、このまま無視して早く家に帰ろう、とそう思ったが、あまりに自信有り気な百合子の態度にちょっと興味を持ったしムカついたので、もう少し相手をしてやることにした。
「やけに自身ありそうだけど、その根拠は?」
「あたしを見れば分かるじゃない」
そう言って、百合子はくるりと回ってみせた。
「学園で一番美しくてモテるのは、このあたしよ。だからあたしがジュリエットになるの。当然じゃない」
「まあ、そう思うのはあなたの勝手だけど」
「そう言うあんたこそ自信過剰よ。親切にも現実を教えてあげようと思った、あたしのこの優しさに感謝なさい」
現実が分かっていないのはどっちだ。
だんだん水樹は本気でムカついてきた。そもそも低脳は嫌いだ。その低脳バカ女から、こんなことを言われたまま、黙ってはいられない。
それにしても、百合子があれだけ自信を持っているのには、それなりの理由があるのだろう。普通に考えれば、ジュリエットに選ばれるのは絶対に水樹なのだ。
そんなこと、いくらバカでも百合子にだって分かるはずだ。
ジュリエットにはなりたくないが、人気投票で一位にはなりたい。
いや、ならねばならない。
それは長年この学園で女王として君臨してきた水樹のプライドである。
いったい何をたくらんでいるのか。
水樹は冷笑を浮かべた顔で百合子を見据えた。
「根拠もないのにすごい自信なのね」
「ふふん」
「生徒会役員と裏取引でもしたの?」
「どういう意味よ」
「役員の誰かをタラしこんで、票操作を頼んだとか。お得意ですものね、そういうの。フフフ」
百合子の顔が怒りで赤くなった。
「そんなことしないわ! バカにしないで」
いきりたつ百合子を見て、水樹は首をかしげた。
本気で怒っているみたいなので「生徒会役員と裏取引」の線は違うらしい。
となるとなんだろう?
「もしかして女の子の買収?」
「え?」
目に見えて、百合子が狼狽した。
「エステの無料券をばらまこうとしているのだったりして」
「そ、そ、そん、そんなこと、し、しないわよ」
「それとも美容整形の割引券かしら。これだったら女の子だけじゃなく、男の子にだって興味ある人いるものね」
百合子の顔色が青くなった。
当たりらしい。
やっぱりこの女はバカだわ、と水樹は思った。
百合子の家は、父親が美容整形外科、母親がエステティックサロンを経営している。だからそれなりに裕福な家庭だし、一人っ子だから甘やかされて育っている。噂によると、週に三度はエステに通って体を磨き、顔もプチ整形しているらしい。
清涼感があり万人に好まれる顔をした水樹に対し、百合子はセクシーダイナマイトボディのお色気ムンムン顔をしている。実際、百合子は男子生徒にはそれなりに人気のある女の子の一人なのだ。
ちなみに百合子は大きなバストを自慢にしていて、それも男子に人気のある一つの要因になっている。本人がいつも自慢しているところによると、Fカップであるらしい。
「豊胸手術でもしたんじゃない?」
陰で女子から、そんな意地悪を言われてたりする。
まあ、とにかく、百合子にとってエステの無料券や美容整形の割引券など、親に頼めば簡単に手にはいるのである。だから単純に、それをワイロにして自分の票を集めようと思ったのだろうが……。
百合子のあまりのバカさ加減に、水樹は頭が痛くなってきた。
そんなことで、みんなが百合子に投票するわけがない。
だいたい、割引券をもらったからといって、みんなが喜んで整形するとは思えないし、仮に整形しようと思ったとしても、学校の友人の親がやっている病院なんかで、わざわざ整形などするものか。
どちらかといえば、人に気づかれないように、隠れてこっそりするものである。
エステの無料券は、まだ使える方だろう。が、青桐の生徒たちはお金持ちの子が多い。エステに行きたいと思うような子は、すでに決まったサロンに通っている。それでも、まあ数人は無料券を使って初エステ体験をするかもしれないが、でも、所詮その程度である。
そんなことは、ちょっと考えれば分かることなのだ。
それが分からない単細胞、楽天家バカが目の前にいる。
しかも、自分の立てた完璧な計画を見抜かれてしまった! というような顔しているのだ。
あー、もう、イライラする。同じ空気を吸っていると思っただけでムシズが走る。
「ねえ、百合子」
「な、なによっ!」
「わたしが人気投票で一位になったらの話だけど。……ま、絶対になると思うけど」
「一位になるのはわたしよ!」
まだ言ってる。
まるで狂犬のように自分をにらみつけている百合子に、誰もが骨抜きになる天使の微笑みを水樹は見せた。
その笑顔に百合子はちょっとたじろぐ。水樹のこの笑顔の裏にある冷たさを、長年の経験から百合子は知っているのだ。
「な、なによ、なにたくらんでるのよ」
「なにもたくらんでなんかないわ。いやね、人聞きの悪い」
水樹は笑顔のまま、百合子の肩に手を置いた。
「ただ、ひとつ提案があるのよ」
「提案?」
「三回まわってワンって言いなさい」
「は?」
「そう、三回まわってワンって言うの」
肩に置いた手にぐっと力を入れ、水樹は百合子の顔を自分の顔の直前に引き寄せた。
「そしたらジュリエット、譲ってさしあげてもよくってよ」
そして今度は、さっきまでとは全然違う悪魔のような冷たい目で百合子を見る。
「どうせ人気投票で一位になるのは不可能なんだもの。この際、その安っぽいプライドを捨てて犬になってみないさいよ。そうしたら」
青白い顔で口をパクパクさせている百合子の肩から手を離し、水樹は背を向けて歩き出した。
「そうしたら、ジュリエットの役だけなら、あなたにあげてもいいわ」
「なっ、なな、な、なんですってぇ!! キーッ!」
立ち去る水樹の後ろから、狂ったような百合子のわめき声が聞こえる。後ろを振り向くことなく、水樹は意地悪く笑った。
あー、楽しい。バカをからかうのは。
少し気分がスッキリした水樹は足取りも軽く家へと向かった。
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