中学部、高等部、大学部から成る私立桜ヶ丘学園は、創立四十年を誇る歴史ある学園である。その長い歴史の中、過去に在学していた活気ある生徒たちの手によって、四季折々様々なイベントが発案され、実行されてきた。
それらのイベントは、廃れてしまったものもあれば、今ではもう恒例行事として、生徒や教師たちの間にすっかり定着してしまっているものもある。
季節は秋。といっても終わりに近づいた十一月の上旬である。
目前に控えるは、今年最後のイベントとなる聖夜祭。
イベントを行うにあたり、その準備を整える指揮をとるのは、もちろん、生徒たちの代表とも言える生徒会役員たちである。
楽しいながらも退屈な学園生活。
それに花を添える役割を果たす各種イベントを、どれだけ楽しく盛り上がりのあるものにできるかによって、その年の生徒会役員、しいて言えば生徒会長の力量を、一般生徒たちは測ることになる。
放課後の生徒会室、桜ヶ丘高等部第四十期生徒会長を務める木本真二(2―A)は、自分の後ろにある黒板を、コンコンとノックするように軽く叩いた。
「はい、みんな、こっちに注目」
木本はさほど大きな声を出したわけでもない。しかし、それまで各々の仕事や仲良し同士の雑談に熱中していた生徒会役員の面々は、ピタリと私語をやめると、一斉に木本の方に注目した。
そんな彼らを木本は満足そうに見回すと、トレードマークである銀縁メガネのズレを中指で直してから、よく通る凛とした声で言った。
「先月の体育祭、みんなご苦労様だった。みんなの努力とがんばりのおかげで、万事すべてにおいてスムーズに進行し、活気に満ちた素晴らしい体育祭にすることができたよ。学園理事長からも、お褒めの言葉をいただいたくらいだ。みんな、ありがとな」
そう言って、学年でも三本の指に入る男前、知的で涼しげな顔立ちの木本が微笑むと、その場にいた生徒会役員すべてがテレくさそうに頬を染めた。と同時に、胸を張り、自信に満ちた顔を輝かせる。
そして、木本もそんな彼らを、誇らしげに目を細めて見た。
「しかし」
それまでの穏やかな顔つきから一変して、キュッと顔を引き締めると木本は言った。
「残念ながら、俺たちにはのんびりしている時間はない。その理由はというと………はい、坂本」
木本は手に丸め持っていた用紙を、自分の側にいた一年生役員の坂本に向けた。指名された坂本は、ビシッと手を上げて元気よく言う。
「聖夜祭が近づいているからでーす」
「はい、その通り」
にっこり笑顔でそう言うと、木本は丸めていた用紙を広げた。
「たった今、野坂と二人で高等部生徒指導主任のところに行ってきた。で、もらってきたのがコレ」
そして、その用紙を、木本は自分の隣に立つ我が親友、生徒会副会長である野坂洋介に手渡した。
用紙を受け取った野坂は、既に内容確認済みのそれにチラリと目を向けた。そして、その内容を確認し直すと、みんなに向かって言った。
「例年通り、聖夜祭は十二月二十四日の夕方四時から行っていいそうだ。会場もいつもと同じ、体育館を貸し出してくれるんだって。学校の必須行事ではないため強制はせず、希望者だけの集まる自由参加にすること。ま、これもいつも通りだな」
言い終わると、野坂は下唇を突き出して肩をすくめた。
「みんなで協力し合い、健全で楽しく、活気あるイベントになることを期待する、だって。よく言うよなぁ」
手にした用紙を、野坂はピンと指で弾いた。
「だって、十二月二十四日だぜ? しかも、翌日から冬休み。学校は午前中に終わるのに、これで夕方、また学校に集まれって言っても、よっぽどの暇人じゃない限り来ないのが普通だよ」
野坂のグチのような呟きを聞いて、木本も同意するようにうなずいた。
「そこで、俺たちの腕の見せ所、というワケだ」
毎年行われる恒例行事である聖夜祭。読んで字のごとく、ま、簡単に言えば、それはクリスマス会のことである。
クリスマスにクリスマス会をしないでどうする、てな感じで存在し続けているイベントではあるが、しかし、ハッキリ言って人気がない。
そりゃ、そうである。
聖夜祭が行われるのは、十二月二十四日、クリスマス・イブの夕方である。彼氏彼女がいる生徒たちが、自由参加であるたかが学校行事に参加しようと思うワケがない。それに、寂しい独り者であっても、一度下校した学校に、数時間してまた戻ってくるなんて、そんな面倒なことをしたいと思うワケがない。
生徒会に残る過去の記録を調べてみても、聖夜祭の参加人数が百人を超えたためしはない。高等部の在籍生徒の数は、約千人以上いるのにも関わらず、である。
しかし、やる以上、生徒会としては手を抜くわけにはいかない。できれば、過去の情けない記録を打ち破り、聖夜祭を大々的に盛り上がるものにしたいと、代々の生徒会長は奮闘してきた。
しかし、いまだかつて、上手くいったためしは一度としてない。
もう、ここ何年もの間、聖夜祭は生徒会にとって、かなり大きな悩みの種になっているのである。
しかし。
「今年は成功する。絶対にさせる」
自信有りげに胸を張り、木本は言った。
「えー? そんなの無理じゃねーの?」
木本の言葉を聞いて、既にあきらめ顔の野坂がグチる。
「俺だって、生徒会でなけりゃ絶対に参加したくねーもん。だって、クリスマス・イブだぞ? しかも、翌日から冬休み。とっとと家に帰ってノンビリしたいよ」
元々、野坂はお祭り大好き男である。
頭脳を使って作戦を立て、それをテキパキと効率よく指揮する頭脳派木本に対し、野坂は作戦実行部隊を率いて作業を正確にこなして行く、言わば行動派である。
通常のイベント時であれば、誰よりも大はしゃぎし、喜々として精力的に動きまわる野坂も、聖夜祭にだけはやる気が起きないようだ。
そして、それは他の生徒会役員たちも同じらしく、みんな一様にダラケていて、まったく覇気というものが感じられない。
しかし、木本は眼鏡をキラリと光らせると、そんな意気消沈する役員たちを力強く見回した。
「いや、今年は必ず成功する。みんな、思い出すんだ。今年の夏の、あの苦労を!」
木本の言葉を聞いた役員たちは、その意味が分からず、互いに目を合わせながら首をかしげた。
「今年の夏? なんだっけ?」
額に人差し指をつき、首をかしげて考えこむ野坂に、木本は口元に自信の笑みを浮かべながら言った。
「あの夏のクソ暑い最中、なんのために女子バスケット部特別応援団の発起を、わざわざ俺たちが支援したと思ってるんだ? 仕事が山積みだったのに関わらず、だぞ?」
「志乃さんの魅力に、おまえがクラクラきちゃったからだろ?」
からかうような口調でそういう野坂に、木本も笑顔でうなずく。
「もちろん、それもある」
そう言うと、壁に貼られてある一枚の用紙に目を向けた。数ヶ月前、新聞部によって発行された校内新聞である。
珍しくカラー印刷されたその新聞には、一人の少女の、目を見張るほどの美しいジャンプ姿をとらえた写真が載せられていた。
さて、話は数ヶ月前、夏休みを一ヵ月後に控えた初夏のころにまでさかのぼる。
弱小運動部ばかりを抱える桜ヶ丘学園において、大快挙とも言えることが起こった。なんと、女子バスケット部が県大会にまで出場し、快進撃を進めていたのである。
たかが県大会、なんてことを言ってはいけない。その、たかが県大会に出場できたことでさえ、桜ヶ丘では珍しいことだったのだから。
そして、その女子バスケット部をキャプテンとして率いていたのが、学園のアイドル、世紀の美少女と名高い三年の慶田志乃だったことから、ことは理事長を含む全学園、更には地元の商店街組合を巻き込んでのお祭り騒ぎに発展した。
この時、一人の男子生徒の発案で、女子バスケット部の特別応援団が臨時で組織されることになったのだが、これを生徒会は完全バックアップすることを決断した。日常業務や迫る体育祭に向けての準備に忙しい中、とにかく生徒会は木本会長の統率の下、できる限りの協力の手を特別応援団のために注いだのである。(※桜ヶ丘交響曲第1番「天使」参照)
たった今、木本が懐かしそうに目を向けている校内新聞は、そんな最中に発行された、言わば思い出の品とも言えるものだった。
もちろん、写真に写る美少女は、慶田志乃その人である。
「そりゃ俺だって、志乃さんのためにだったら、どんなことでもしてあげたいと思うよ。あんなキレイな人、これまで見たことないもんな。でも………」
それまでのにこやかな笑顔から一変して、木本は策略家の顔をのぞかせた。
「なんの見返りもなく労力を費やすほど、俺はお人よしじゃないんだよな」
そう言って、にやりと笑う。
「今年の聖夜祭の聖母役、慶田志乃をかつぎ出すぞ」
木本の言葉に、生徒会役員たちはザワめいた。
聖母役と言えば聖夜祭の目玉である。清楚で美しい衣装を身にまとい、聖母マリアに扮する女生徒が美しければ美しいほど、聖夜祭に参加する生徒たちの数が増えることは間違いない。そういう意味では、まさに慶田志乃は聖母役にうってつけなのだ。
しかし。
「聖母役に志乃さんを?」
「そんなの無理じゃないかしら?」
「断られるに決まってますよー」
そういう役員たちの不安そうな声が上がる中、野坂も顔をしかめて言った。
「あのさぁ、木本。そいつはちょっと難しいんじゃねーか? だって、あの志乃さんだぞ? あんだけキレイなくせにさぁ、人前とかに出るの、すっごく嫌がるじゃん。いい案とは思うけど、やっぱり無理じゃねー?」
「だから、あの特別応援団発足の時、無理してまで協力したんだろ?」
さらりとそう言う木本を見て、野坂は目を見開いた。
「えーっ! おまえ、あの時そこまで考えて応援団のバックアップを引き受けたのか?! 恩を売っとくために?!」
「恩を売る、ってまでのコズルイ気持ちじゃないけどね。さっきも言った通り、志乃さんの力になりたいっていう素直な気持ちもあったし。でも、ま、一応、聖夜祭のことは頭にあったかな」
「さすがだなー。俺はそこまで考えてなかったよ。まあ、俺はあの時、体育祭の準備の方を担当してたから、応援団にはあまり関わっていなかったんだけど」
感心したようにそう言うと、野坂は少しにやにやした。
「いやぁ、さすがは木本。四十期の誇る敏腕生徒会長だな。やることにソツがないと言うか、無駄がないと言うか。いやぁ、アッパレアッパレ!」
その大げさな褒めっぷりに、木本は肩をすくめる。
「なんだよ、腹黒いとでも言いたいのか?」
「まさかっ、滅相もない!」
両手を上げてNOを示し、でもやっぱりにやにやしている野坂を見て、木本は笑った。
「まあ、いいさ。好きなように言ってくれ」
そして、ちょっと真面目な顔して生徒会役員一同を見回す。
「生徒会っていうのは、言ってみればボランティアで働く学園の雑用係だ。大変なこともいっぱいあるのに、一般生徒はそれを知らない。俺はいつも思ってるよ。俺なんかの下で、一生懸命働いてくれるみんなのことを、とてもありがたいなぁって。心から感謝してるし、誇りに思ってる。みんな、本当にありがとう」
そう言って、ペコリと頭を下げた。
「そんな、会長やめてくださいよ。俺たちだって好きでやってるんですから」
「そうですよー」
「頭なんて、下げないでください」
生徒会役員たちから、テレ恥ずかしそうな声が上がる。
「うん、でも俺は本当にそう思ってるんだ」
顔を上げた木本が、目を細めて微笑んだ。そして、今度は力強く言う。
「だからこそ、今度の聖夜祭はなにがなんでも成功させたい。これまでボロクソだった聖夜祭を成功させたら、俺たち第四十期生徒会の名前は、必ずこの桜ヶ丘の歴史に刻まれる。名を残せる。俺はみんなのがんばりを、間単に忘れ去られるものにしたくないんだ」
木本は自分の後ろにある黒板の中心に、美しい文字で大きく「聖夜祭」と書き入れた。そして、そこを握り締めた拳でドンと叩く。
「そのためにも、絶対に聖夜祭は成功させる。みんな大変だろうが、がんばってほしい。みんなで力を合わせ、なにがなんでも聖夜祭を成功させよう!」
それを聞いた生徒会役員たちは、感動と感激、更に感謝の気持ちから目をうるうるさせた。そして、自分たちの敬愛する生徒会長をうっとりと見つめる。
「あ、あたし、がんばります!」
「なにがなんでも、聖夜祭を成功させようぜ!」
「みんな、がんばろう!」
そんな、熱気に満ちた声を満足そうに聞いていた木本が、しばらくしてから言った。
「明日の放課後から、志乃さん説得に動き出すぞ。まあ、九割がたOKしてもらえると思うが、念のため、全学年の女子限定、人気投票を行う。志乃さんがダメだった時の、言ってみれば保険ってやつだ。その辺の用紙の手配や投票集計だけど………順ちゃん、一年生役員を数名使っていいから、手配してくれるか?」
「まかしといて」
今期会計担当、二年の田上順子が明るく答える。
「聖夜祭にかかる費用や収支の管理、引き続きそのメンバーに頼むことになるけど、いいかな?」
「いいけど、デキのいい子、先にもらってくわよ」
肩ぐらいで切りそろえたつやつやの黒髪を揺らしながら、順子がいたずらっぽく笑った。
「それでいいならOKよ」
「うーん、仕方ないなぁ。でも、坂本はナシな。ちょっとこっちで使いたいから」
木本と順子の会話を聞いていた坂本が、脅えたように飛び上がる。
「うわー、会長、俺になにさせるつもりですか? 恐いなー」
「ま、後で話すよ。心配するな、変なことさせるつもりじゃないから」
そう言って安心させるように坂本の頭をポンと撫でると、その場にいる全員を見ながら木本は言った。
「それ以外の細かい打ち合わせは、明日から決めよう。まずは、志乃さんを聖母役に獲得することが先決だ」
「確かに、残りの計画は、それがハッキリしてからじゃないと立てられないもんな。聖母役が志乃さんかそうじゃないかによって、参加者の人数は大幅に変わってくるし」
野坂の言葉に、木本はこくりとうなずいた。
「というワケで、みんな、今日は早めに下校して、ゆっくりと最後の休息を取って欲しい。明日から忙しくなる。大変だろうが、みんなのガンバリだけが頼りだ。みんな、よろしく頼む!」
「はいっ!!!」
その場にいた全員が、元気に揃えて声を上げた。
帰り支度を始めた役員たちがワラワラとうごめく中、両手をポケットに突っ込み、黒板に背をもたれかけた野坂が、笑いを抑えた顔をして木本に言った。
「アメとムチの使い方、相変わらず上手だなー」
「褒め言葉か? だとしたら、素直に受け取っておくよ」
少し笑いを含んだすました顔で木本は答える。
「嫌味なら、聞かなかったことにするけどな」
「嫌味なもんか」
野坂は笑う。
「実際、みんなの覇気は上がったし、心は聖夜祭に向けて一直線。いやぁ、お見事! ――――でも」
腕を組むと、眉を寄せて首をかしげた。
「志乃さん、本当に引き受けてくれると思うか? 去年も一昨年も、生徒会の先輩たち、ずっと断られ続けてきたんだろ? よっぽど嫌なんだなぁ、人前に出るの」
「聞いた話では、自分がキレイだってことをコンプレックスに思ってるらしいわよ」
帰り支度をすませた順子が、木本と野坂のところにやってきた。
「噂だから、本当かどうか分からないけど。でも、信じられないわ。あたしがあんなにキレイだったら、もう両手を上げてみんなに自分の美貌を見せびらかすのに」
「順ちゃんは明るいからなぁ」
木本が笑いながらそう言うと、順子はぶうと頬を膨らました。
「なによー? 能天気だとでも言いたいの?」
「いやいや、まさか。そんなこと思ってないよ。それに、その明るいところが順ちゃんのいいところなんだし」
「その通り。俺は順子のその明るいところに惚れてんだから」
野坂が後ろから順子の首元に両腕を回す。
「こらぁ、くっつくのやめなさいよ。みんな見てるでしょう!」
首だけを後ろに向けて、順子は野坂をにらみつける。しかし、野坂はへっちゃらだ。
「いいじゃんか。俺たちが付き合ってることなんて、みんな知ってることなんだしー」
「それでも、目のやり場に困るでしょーが」
「みんな見慣れてるよ。平気平気」
「いいから、早くその手を離しなさい!」
「はぁーい」
渋々ながらも、野坂は順子から手を離した。
今の会話から分かる通り、野坂と順子は付き合っている。もうかれこれ四年にもなる付き合いで、それはかなり長いと言える。
ついでに言うと、木本、野坂、順子の三人は、桜ヶ丘には中学部からの入学である。その頃から三人は生徒会役員をしていて、中学三年の時には今と同じ、木本が生徒会長、野坂が副会長、順子が会計と、りっぱに主要三役を務めあげた仲なのである。
「それにしてもさ」
順子から離した手を、持て余したようにポケットに突っ込みながら野坂が言う。
「志乃さん、本当に引き受けてくれると思うか? 彼女なしでは、聖夜祭の成功は絶対に無理だぜ?」
「そうね、本当にコンプレックス持ってるんだったら、応援団の時の恩だけじゃ、ちょっと難しいかも」
野坂と順子の二人から口々にそう言われても、木本のすまし顔は変わらない。
「大丈夫だよ。志乃さんにうんと言ってもらうための補強策、もうひとつ考えてあるから」
余裕の笑顔でそう言うと、木本は少し離れたところで雑談に花を咲かせている坂本に声をかけた。
「おーい、坂本、ちょとといいか」
呼ばれた坂本は、木本のそばに喜々としてやってくる。
「なんですかー?」
「うん、明日の放課後なんだけど、小林が生徒会室に来るように、うまく手配してくれないか?」
「小林を?」
「ああ。確かおまえら、同じクラスだろ? よろしく頼むよ」
ちょっと考えるようにして坂本は言う。
「志乃さんを説得してくれるように頼むんですか?」
「そんなことはしないさ。ただ、結果的にそうなるように仕組むだけ」
意味深な木本の言葉に、坂本はちょっと首をかしげる。が、笑顔で言った。
「分かりました。理由はなんだっていいんですよね?」
「ああ、うまい菓子があるから食べにこい、とでもなんとでも言っておけ。あいつのことだ、それで充分だろ?」
プププと坂本は笑う。
「了解しました。それじゃ、他になにもないんでしたら、俺、これで失礼しまーす」
「お疲れさん。明日からまた頼むよ」
さてと、と木本はあらかたの役員たちが退室し、さっきまでとは打って変わって静かになった生徒会室を見回しながら思った。
すべては明日だ。
明日、慶田志乃に「うん」と言わせることができるかどうかに、聖夜祭成功のすべてかかっている。
戸締りを確認し、電気を消した木本は、自分の荷物を脇に抱えて生徒会室のドアの鍵を閉めた。そして、また楽しくなりそうだなぁ、とちょっとウキウキしながら、鍵を返却するために事務室へと向かったのである。
つづく
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