「溶かされる氷」          咲久羅サマ:著



 周りからは『氷の女王』と呼ばれ影では―――と呼ばれる私の人生。
 ああ、もう!!
 神様はどれだけ意地悪なのよっ!




 今日も朝から、機嫌を悪くさせることが起きた。


「おはよー、萌子先輩」
「…おはよ」
「あれ?今日は朝からご機嫌ナナメ?」

 私の顔を覗き込むように屈むのは―――『遠藤要』
 高校1年生で私のひとつ下。
 2ヶ月前から付き合うようになった、初めての彼氏。


「だってあの人たち、さっきからカメラもって『萌え〜』って云ってるんだもん !!朝から気分悪くもなる!!」
「…あの眼鏡かけてハチマキしている男3人組のことですか?」
 私は首を縦にふって頷いた。

「わかりました、俺に任せておけば何も心配ありません」
「なんだか、敏腕弁護士みたいな台詞ね…」
 
 そう云って彼は、3人組みのとこへ行ってしまい、数分したら戻ってきた。
 見てるとさっき3の人組は、そこには居なかった。

「先輩、もう大丈夫ですよ」
 笑顔で云う彼。
「そうみたいね…」
 我が彼氏ながら凄いわね。





「朝から、大変ね〜」
 そう云いながらも楽しそうに笑っている、友達の梨恵。
「そういうなら、代わって」
「嫌よ」
 キッパリ返す梨恵。
 あんた…それでも友達?


 『萌子』っていう名前のわりに、私は可愛くない。
 まず、一重の切れ長である目。
 更に170センチの身長。
 ちょっと顔をしかめただけで、怒っているように見えるし、笑うとなぜか涙目 に『怖い』と云われる。

 そして名づけられたのは――『氷の女王』
 今では、名前よりもそっちで呼ばれることが多い。
 それに便乗してか、今朝のような写真を撮って『萌え〜』と云う男どもが出現 した。
 なんでも顔と名前のギャップが『萌え』らしい。
 知らんわ、そんなこと!!

 ――確かに私の名前は『萌子』だけど、そんな風に呼ばれたくないっ!!


「でも、あたしさ〜要くんはチャレンジャーだと思うなぁ〜」
 人が買ったじゃがりこをぼりぼり食べながら、机に肘をついている。
 なんだか…将来ワイドショー見ながら、せんべいをほおばっているおばちゃん になりそう。

「どういう意味かしら、梨恵さん?」
「…顔、怖いって」
 失礼なこと簡単に云うわね。
 中学からの付き合いもあり、梨恵は簡単には怖がらないから楽だけど。
 他の人はそうはいかない…。


「それで、続き」
「だからぁ、要くんみたいな爽やかな男の子がよく萌子に告白したな〜って思っ たのよ。知ってる?要くんけっこうモテるんだってー」
「知ってる」
 そう、要くんはモテる。
 あの爽やかな笑顔に177センチのサッカー部。
 そして、優しい性格。

 何度、練習を見に行って影で悪口云われたことか!
 でも……私に直接云ってくる勇気ある女の子なんていないか…。





 そう思っていた私の前に…この状況。
 呼び出しで来てみれば、目の前には全員で5人の女の子。
 少人数ではなく、大勢でくれば安心っていうことかぁ。


「先輩って本当に付き合っているんですか?」
 グループのリーダー的存在の女の子が聞いてきた。
 他の子はびくびくしているけど、この子だけは堂々としている。

「付き合っているけど…」
「そうですか?そうは見えないんですけど」

 ―――そうは見えないのっ!?私たちって!?
 あんなにラブラブなのに!!?
 いや、そう云えば付き合って約2ヶ月。
 要くんの朝練のないときは一緒に登校したり、放課後は部活終わるのを待った りして一緒に帰るけど………デートは1回もしたことがない!!
 ……うん?確かに前に一緒に試験勉強をしに図書室に行ったことはあるけど― ―これってデート??


 しばらく自分の世界で考えていたら――
「せ、先輩?」
 さっきの子が話しかけてきた。

「ごめんね!今はそれどころじゃない!!」
 これは要くんに会って云ってこなくちゃ!!


 急いでその場を離れ、要くんを探し始めた。
 なんだか、廊下にいた人たちが真ん中を空けてくれるのは気のせい??





「あっ萌子!」
 後ろから聞こえてきたのは、梨恵の声。
 何か慌てている様子。
「どうしたの?」
「いや、こっちが聞ききいって!あんたがすごい形相で廊下を小走りしていたっ て聞いたから来たってわけ」
「すごい形相って…」

 周りを見ると、廊下には誰もいなく教室の小窓からみんなちらちらこちらを見 ている。
 そ、そんなに逃げなくても…。


「要くん、探していただけだよ」
「要くんなら、さっき裏庭で見かけたけど」
「ほんと!?行ってみるね!」

 梨恵のもとから離れると後ろから「怖い顔しないようにね〜」と梨恵が叫んで いた。

 ………だから地顔だってば!!





 裏庭に向かうと芝生の上に要くんが寝転んでいた。
 近寄ってみると、気持ちよさそうに眠っていた。
 起こさないよう、隣にそっと座ってみた。


「はぁ〜要くんは私のどこがいいんだろう?」
 確かに、私も謎なんだよねぇ。
 他の男の子は怖がって近寄ってこなかったし。


 もう1回ため息をつこうとしたとき―――
「そんなの全部ですよ」
「……へっ?」
 隣を見ると、要くんが体を起こしていた。  ぽかんとしている私の顔を見てクスッと笑った。


「ちょ、ちょっと今の聞いてた?」
 恐る恐る聞いてみると、彼は満面の笑みで
「ばっちり聞いてました」
 ……恥ずかしいーー!!!


「周りが何というと俺にとって先輩は可愛いです」
「なっなななに云って…」
 明らかに動揺している私に彼は優しく頭を撫でた。


「噂で先輩のこと知って、初めて見た瞬間―――俺は好きになっていたんです」 「…初めて聞いた」
「うん、初めて云いました」
 ――でも、かなり嬉しい。
 顔が赤くなるのを我慢するくらい。



「じゃあ、可愛い彼女のお願い聞いてくれる?」
 私の提案に要くんはすこし驚いた顔をしてすぐに頷いた。


「何ですか?」
「私とデートして!」

 この一言に彼は嬉しそうに笑った。
 そして、私も微笑んだ。




 彼だけが、私を『可愛い』と云ってくれれば周りなんて関係ない。
 だって彼の前だけは『氷の女王』ではなく普通の女の子でいれるから――。
 神様も少しは私の味方になってくれたみたい。
おわり




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ウチのサイトの10万打のお祝いにいただきました。
うわー、すごーく嬉しいです♪
本当に本当にありがとうございました!!!!!


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