冬に入って、もう午後五時は外は車やビルのあかりがないかぎりは、もう周りが見えることはあまりない。特にビタミンAが足りない俺は。
そして、その午後6時に校内の見周りが終わると先生達が生徒のいない暖かい職員室でガヤガヤと賑やかにおしゃべりをしていた。ロミオが職員室に入る引き戸を開けると暖かい空気が漂ってきた。
「あっロミオ先生!!おかえりなさい!何飲みます?」
僕が空気も温度も暖かい職員室に入ると芦原先生が立ち上がり言った。
「ロミオって言わないでくださいよ。」
「いいじゃないですかぁ」
芦原先生はニマニマした笑顔で言いながら湯沸し室へ歩きだそうとしていた。
「え〜あっ僕ココアでお願いします」
「はいは〜い」
先生は僕に背中を向けたまま、返事をした。
僕は自分の席へ座った。そうすると隣の桑田先生がニヤニヤした顔でコーヒーをすすり、言った。
「ロミオ、合コン行かない?」
桑田先生は29歳でなんと言うかすんげぇイケメン!!ほのかな茶髪がちょっと傾いただけでゆれると何とまぁ女共の目は「きゃーーー!」なんて黄色い声を出しやがる。だが残念なことに桑田先生は結婚している。
「え?というか先生結婚してるじゃないっすか!」
「俺はいいんだよ〜で、いく?」
「行きませんよ。」
「え〜何?彼女いんの?」
「いっいませんよ!何いってんすか?!」
僕が大きい声を出すとココアを置きにきた芦原先生がビックリしたみたいで、もう少しでココアをこぼしそうになっていた。
「もービックリさせないでくださいっ」
「あっすいません」
芦原先生はそういうと女の先生達がいるところへおしゃべりを再開しようともどった。
「じゃぁ、何でだよ。ロミオ君さぁ〜もしかしてまだ気にしてる?」
桑田先生は首を傾けた。この男は首を傾げてもかっこいい。
「・・・・俺はそんな気にしてませんよ!」
実は、僕には好きな人がいた。でもってその僕の好きだった人がこの桑田先生の嫁さん。京子(けいこ)。僕はいつも京子先輩って呼んでいた。僕と京子先輩は大学での先輩・後輩の中でそれ以上の関係はなかった。で、伝えられないまま京子先輩と桑田先生がいつの間にか付き合ってって結婚してた。それが3年前。ちなみに京子先輩は桑田先生の二歳年下で、27歳だ。そして僕が24歳だ。
「そう?じゃぁコンパ行こうよ〜」
本当は気にしすぎってくらい気にしてる。それでも、もうこの人たちにいろいろ心配されたら僕が困る。京子先輩が悩むのは嫌だし。それに桑田先生が王手をかけてきた。
「ロミオ君。俺、いつもきみが仕事でミスったときどーしてるかなぁ?」
この人はそうだ。いつも僕の上にいる。そして逆らえることはできない。そうして僕はうんざりしていった。
「行きます!いきますよ!いつですか?!」
開き直った僕の声ににんまりとした顔で笑った桑田先生はやはりかっこいい。
「25日!まっロミオ君が大変だってことはわかってるよでもさァ〜京子の友ダチらしいんだけど、何か男に振られたみたいでさー」
なんかそういうの嫌だ。しかもクリスマス!!でも逆らえない俺は言った。
「癒せってことですか?」
「まァ、そんな感じ〜あっ人はみんな集まってるからさ〜心の準備だけしてくれればいいよ〜」
桑田先生はニンマリしたままコーヒーを飲み終えたのか
「芦原先生、コーヒーのカップお願いしていいですか?」
「いいですよ〜」
といって、桑田先生はコートを着込んだ。
「あら?桑田先生もう上がり?」
「ええ。」
桑田先生は優しく微笑んで一礼した。
「それじゃァね。ロミオ君」
「あっはい。」
桑田先生がにっこりするとそっぽを向き、芦原先生がニヤニヤしていった。
「今日結婚記念日ですよね?」
「まァね」
桑田先生はそれに反抗して顔を赤くもせず少し笑った。
ボクは
「文華チャンにまたおそぼうねって言っといてくださいね。」
淋しさを紛らすために娘である文華ちゃんに話をむりやりひっぱりだした。
「はいはーい。じゃ、」
「はい、また明日。」
「コンパは来週の日曜日な。」僕だけに聞こえる声でそういって職員室の皆に聞こえるような声で「それじゃ失礼します」
他の先生方は「さよなら〜」などと声をかけていた。
桑田先生が帰ると僕は先生方の楽しい和気藹々とした方には行かず、一人で黙々と明日、二年生にやらせる小テストを作った。できるだけ、コンパのことと桑田先生と京子先輩達のことを思い出さないようにただ集中して小テストをつくっていた。
小テストをつくり終えると、先生方が
「ロミオ君がんばるね〜」などと僕をおだてた。僕は先生達とすこしだけおしゃべりをして家に帰ることにした。電車に乗って変えるのもめんどくさい時間だったために兄ちゃんにメールして迎えに来てもらうことにした。それでも兄ちゃんはもうビールを四本も飲んでいて仕方なく電車で帰ることにした。その間先生達とおしゃべりをして生徒達の恋バナを聞いた。俺の副担任しているクラスの女子と桑田先生が担任しているクラスの男子が付き合って今日で1年になったらしい。それを聞いたとき何だか舌打ちがしたくなった。だがそれを抑えて、「ボクそろそろ帰りますね。電車なくなるんで。」と言って、職員室を出た。駅までの夜道は、白い息がマフラーからこぼれ出て、鼻のてっぺんはいつの間にか赤くなっていた。俺の頭の中ではしゃかりきの淋しさと怒りと幸福さを願う想いとが混ざり合い、頭の中がめちゃくちゃにこんがらがっているといつの間にか駅の階段までいた。定期券をかざしホームに入った。電車が来るまでもう三分もなかった。それでもこんがらがった感情はどうしようもなく、ただ頭の中で回っていた。その間に電車も着いていて反射的に乗り込んだ。席も空いていて自動ドアのすぐ隣にある席に座った。誰かに凭れたい気分でその誰かってのはすぐに見つかった。暖かさなど微塵もないただのてすり。それに頬を当ててボーっとして頭を冷やそうとした。そうしているとこんがらがった感情なんか忘れて行ってうとうとしていた。その時に髪の毛がほのかに茶色いふんわりとした女の人がふんわりとしたスカートをひらりとさせた。女性は僕に対して後ろ向きで仁王立ちしていた。この時何が起こったのかはわからなかった。
やっぱり僕も男なのでうしろから見ると彼女は相当の美人に見える。そう思うと顔はとんでもないブスだったりしたらということを考える。でも彼女は顔にくっついた髪の毛を取るために顔を横に振った。そこから見えたのはパッチリとした目とふんわりとした唇。でもすぐに後ろ姿に戻ってしまった。そして彼女はおとなしくなったかというと
「いい加減にしてください!私がどんな気持ちだったかわかるんですか?!」
と可愛らしい声のくせに心を込めて怒鳴った。
何があったんだよ。と勝手にあきれた。彼女が叫んでいる間に僕の降りる駅についた。その場からはやく逃れたくて僕はささっと立って扉が開いた瞬間に電車から飛び出した。電車からおりて階段をのぼっていると後ろから走る足音が聞こえた。僕は振り向かずに歩いたままで、足音は僕の方へ近づいて来てあっという間に抜かされた。足音の主はさっきの女でチラッとみた女の目には液体が浮かんでいた。思わず
「え?!」
と言ってしまった。それに彼女は気づかずにタッタと走り上っていった。
僕は一人顔を赤くして、階段を上った。
駅の外は寒くていつの間にかまた赤い鼻になっていた。公園の前を通るとあの女性がいた。僕は気になって、公園へ入った。彼女はベンチに体育座りをして顔を腹と足の間にうめていた。僕は思い切って、彼女に話しかけた。
「あの、ここ危ないですよ?」
彼女は顔を僕のほうには向けず、そのままでうなずいた。
「だから、家帰ったほうがいいですよ?」
彼女はまた同じ行動を取った。
「ここ、変態とかでますよ。襲われちゃいますよ?」
彼女はまたうなずくだけだった。
「あの、さっきなんでないてたんですか?」
彼女は顔をビックリしたようにあげた。目は腫れていたけど、それでも可愛かった。
「なっなんでっしっしってるんですか?!」
僕のほうもビックリして
「ああ・・さっきみたんですよ。向かい側の席だったんで・・・。」
彼女は唾を飲み込んで、
「聞いてました?」
僕は考え込んでいて聴いてはいなかった。
「あの、話してもいいですか?」
僕は「ああ、この人僕がこの人の話きかなかったらまた泣いて、変態に襲われてぼろぼろになるんだろうな」と思うと、
「いいですよ。」
っと言ってしまった。別にこんな美人じゃあ、特に問題もないしな・・・・と思うと、俺は何を考えてるんだ!と自分に軽蔑した。
「とりあえず、ここ危ないですし、寒いですしファミレスでもいきません?」
彼女はうなずいた。ファミレスに行く途中から彼女の話は聞いていた。
彼女の名前は筒井 寿李依(つつい じゅりえ)という名前で僕と同じ職業、つまり中学教師らしい。それで、たまたま電車で自分が教師になろうと思った中学時代の教師に出会ったらしい。それで、その教師が今は教頭らしい。その教師は「生徒なんて嫌いだよ。この職業はリストラなんてないからね、やってられるんだよ。」とため息を吐いていったらしい。それに彼女は
「いい加減にしてください。人がどんな気持ちだったとおもってるんですか?!」
っと怒鳴ったらしい。それでそこに居た堪れなくなり、本当は自分が降りる駅ではなかったのに出てしまったらしい。
そこまで聞くとファミリーレストランに着いた。そこにはやはり人は少なかった。店員が来て席まで案内してくれた。
「夕食たべました?」
「いえ。ここで食べちゃいますか?」
「そうですね。何にします?」
「じゃあ・・」
っと言って初めて会ったにしては良く話せたと思う。頼んだものも来て、食べて例の教頭の愚痴もたくさんつぶやいた。
最後に彼女は紅茶を頼んだ。僕はミルクココアを頼んだ。
「甘党ですか?」
「あっはい。」
「男性がミルクココアって結構可愛いですね。」
「あっはっは、ありがとうございます。」
彼女は笑った。
「いえいえ。」
僕は何でわらったのか分からなかっためんどくさくて、きかなかった。
「筒井さんはすきですか?ココア」
「あたしはあんまり甘党じゃないんですよ。」
「へーだから砂糖入れないんですね。」
「ええ。でも時々食べたくなるんですよね。すんごくあまーいチョコとかココアとか。あんことか」
「へー。あっ筒井さんって中学教師なんですよね?どこ中ですか?」
「繭帆中です。」
「じゃァ遠いですね。僕南中の教師なんです。」
「え?あっもしやあの菅田ロミオ先生?」
「え?はい。何なんですか?」
僕はココアを飲もうとカップを持った。
「知らないんですか?菅田先生ってサッカー部の顧問でしょ?」その通りだ。僕はこの年で顧問っていうのは珍しいっていうけど、高校のとき国立までいった。だから結構、生徒に教えられるのだ。
「それでね、菅田先生はね、練習試合とかで繭中にくるでしょう?そのとき女子生徒とか先生方に絶大な人気なんですよ。」
「は?」
僕はココアをゴクリと飲み込んだ。
「だから、自慢しないとだなーっとおもって。」
「え?えぇ?」
「あれ?全然知らなかったんですか?」
「知りませんよ!!」
「あら?」
彼女はにこやかに笑い首をかしげた。その顔が何故か俺の心をドキンとさせた。時計を見るともう学校を出て三時間以上たっていた。もう10時だ。
「そろそろ出ませんか?」
「そうですね。」
「駅まで送りますよ。」
「ありがとうございます。」
出るとやっぱり寒かった。また赤っ鼻になった。僕はまた彼女と連絡を取りたくて彼女に携帯の番号とアドレスを聞いた。彼女は快く教えてくれた。
気がつくと、もう駅だった。
彼女は定期をかざして、ホームへ入っていった。俺はそれを両手をコートのポケットにつっこんで見守った。彼女が礼をした。俺もポケットから手を出して礼をした。彼女は俺が頭を上げるとにこにこ笑っていた。俺はどうわらっていいのかわからなかった。そのせいで笑顔がはにかんだ。彼女はまたくすりとわらった。そして、彼女は声をパクパクさせた。俺にはそれが何て言ったのか分からなかった。俺は改札口からホームへ届くように「え?なんて?」といった。彼女はまたくすりとわらってホームから改札口へ届くように「連絡してもいいですか?」といった。俺は「いいですよ!」とうなずいた。
また彼女は微笑んだ。そのときに電車が来て、彼女は電車に乗って、窓際から笑顔で手を振ってくれた。俺も手を振った。
「ちょっと、なかよくなりすぎたかもな・・・・」
とひとりごとをつぶやいて俺は家へ帰った。
いつの間にかクリスマスがやってきていた。合コンは3対3というまぁ僕としてはいやな感じになった。恋人に振られたという人は・・・・
「あの・・・集まっていただいて悪いんだけどね、彼女あっ慰めてほしいっていった子、あのコなんか、風邪ひいちゃったみたいでさ、駄目なんだよね。ごめんね?だからさ、ここはもうのんじゃわない?」
ということになった。だからおれ達男三人と女2人っていう感じになった。でもって、もちろん参加した桑田夫妻は2人でここは満喫しなきゃね!!なんていってて。それと俺と同じで35で独身の錐丘先生は俺と同い年のなんとかさんとお酒を楽しんでる。そして俺はどうしようもなく、桑田夫妻に断りを入れて家に帰ることにした。雪が積もっていて寒い。こんなときにふるんじゃねぇよ。何だか寂しくなるだろうがよ!!ったく・・・腹が立ってきた。こんなにひとりが寂しいものかと。帰り道にそんなことを考えてるなんて俺も寂しがり屋サン入りしちまったよ・・・。どうせ家に帰っても誰もいない。兄ちゃんは恋人の麻子さんとどっかいってるし、俺の両親も50すぎた今、子供が成人したからとどっかでディナーを楽しんでいる。俺だけかよ。俺だけが愛する人といねぇのかよ。ため息まで出てくる。電車に乗りクリスマス真っ盛りの街の風景は鮮やかだった。それをずっと俺は見つめていた。
とんとん。肩を叩かれた。俺が振り向くと満縁の笑みを抱えた彼女がいた。筒井 寿李依がいた。
「座りませんか?」
と言ってきた。俺は頷いた。
「何かさびしそうでしたよ?どうかしたんですか?」
とたずねられた。今までのことを説明するのはめんどくさかった。でも・・・こうなりゃ、この人とクリスマスを過ごそうか。
「何でもないです。ただヒトリでクリスマスを過ごすのってさびしくって・・・」
誘った。といったほうがいいだろうか。
「そっそうなんですか・・・。」彼女は何故かあわてた。ささっと誘ってくれよ。じゃなきゃおれが誘うぜ。このおねえちゃんは恋愛オンチなんだろうか。俺がそんなことを言ってるうちに彼女は喋りだした。
「あーのーもしよければ、わっわたしと・・・・」
こんなにテレなくてもいいのに。俺はちゃんと聞いてあげた。
「一緒にすごしませんか?」
俺は笑顔で
「いいですよ。」
といった。
「よかった・・・・。」
「僕もです。」
「あたし、実はこの間彼氏にふられたんです。」え?「それで友達に合コンセッティングしてもらったんですけど、」おい。まさか。「好きなひとができたんです。それで、友達にかぜひいたって嘘吐いて・・・。」うそだろ・・・・・。この人が本来俺が癒してあげるはずの・・・「あーわるかったなぁー。」なんでそんなのんびりと・・・。いや、まて。この人が本当に、
「ねぇ。筒井さんって何歳?」
俺は賭けに出た。この人が京子さんと同じ年ならマヂだ。マヂで合コンで会う人だった。
彼女の唇が動いた。
「にじゅう・・・」うわ。来そうだ。「にじゅうろく。」え?先輩は27で。まてよ。この人まだ誕生日来てないのかも・・・・。
「菅田先生は?」
「あっ24です。うっわーあたし年上だ!!」
「そんな風には見えないですけど。」
「ガキっぽいってこと?」
彼女は笑いながら言った。
「いやちがいますよお〜。」
俺も笑いながら。
やばい。これは運命かもしれない。定めかもしれない。彼女と出会うべきだったのかもしれない。
やばい。俺、この人のこと好きになっていく。つーか好きだ。この人好きだ。
俺は彼女とジョークをいい、笑った。電車に乗って。電車の中はビルの明かりとかそんなものがきらきらひかってるようにも見えた。
『○〜○〜お忘れ物ないようにお降りくださぁい』
あの鈍った声がした。
「とりあえず出ましょうか。」
「そうですね。」
いつの間にかおれは彼女の手を取っていた。
駅の前に出ると大きなツリーがあった。
「きれぇー」
「ですね。」
彼女はキラキラ光るツリーの前に俺の手を引っ張って、輝いた目でみた。この人は絶対いい人だし。絶対優しい。絶対守りたい。あー俺。この人すきだ。さっきよりすきになった。
「あの。」
俺が声をかけた、」
「はい?」
彼女が振り返ると俺はまじめな顔をしていたと思う。
「俺、あなたがすきです。付き合いませんか?」
とストレートに告白した。彼女は驚いたかおをしたけどすぐに笑顔に戻り
「ええ!ぜひ!あたしもあなたのこと大好きですから!」
と微笑んだ。その笑顔にまた好きの大きさがUPした。
俺は彼女を抱きしめた。年上の筒井 寿李依。この人は絶対俺を頼ってくれる。
抱きしめた。その強さは心のなかに深く染み付いた。
俺はこの人を絶対に離したくない。とさえ思う。
もう。クリスマスとかそんなの関係なくて・・・・。ただ。俺は彼女を守りたい。
幸せになろう。といつかまたクリスマスに言おう。
すこしひねくれて俺がこんな優しい気持ちになったのは彼女のせい。
こんな風に出会えたことに軌跡さえ感じる。
聖なる夜に出会えた幸せは離したくないとおもった。
白い吐息が周りの寒さを強調させるけど、ここはあったかい気がする。こんなクサイ言葉は一生彼女には言わないけれど。
みんなに・・・
メリークリスマス
−終−
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素敵な小説をありがとうございます!
ココアを飲んだ時にように温かい気持ちになれました!
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